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-オシツオサレツ日々は過ぎる

北森鴻「メイン・ディッシュ」文庫版


 五年前に図書館で借りたことがあり、そのときの感想が下段。

 北森鴻は「冬狐堂シリーズ」とか「凶笑面」とか固そうな本しか書かないのかと思っていたので、それを愉快に裏切るこの演劇料理推理本はいつ読んでも、味わい深く楽しい。


 この五年の間に自室に今までなかった池波正太郎の「食卓の情景」があるのは、この本のせいだったかとふと気付いたり、やっぱりこのフリッター食べたいよなとか、どれかひとつ飲食させてくれるならば梅酒だなとか、果てしなく食欲中枢を刺激されて、且つほんわかしたテンポにそぐわない謎解きがアンバランスで、あれよあれよと再読も面白かった。

 文庫版は最後に加筆した特別短編が付いていて、オトク。それが読みたいが為に、古本屋で思わず買っちゃんたんだけどね・・・


メイン・ディッシュ (集英社文庫)

メイン・ディッシュ (集英社文庫)


<2000/8月ハードカバー版読了時の感想>
 美味しそうな小説というのは、池波正太郎先生を例に挙げるまでもなく、読み手には目に毒であり、私には以ってのほか気の毒だ。 なにせそれを食べようと思ったら、自分で作るしかないのだから。悲しい。


 いや、それにしても、『メイン・ディッシュ』は良かった。『狐罠』を借りたついでに図書館から一緒に拝借してきたのだけれど、私の性としてはこっちのノリもとても好きだ。

 ひどくノリがいいのに、とても謎があって不思議なままどんどん進んでゆく。こういうのを、実に言葉巧みというのかな。


 劇団かドラマでやったら、面白いだろうなと、読後にシアワセな気分。ミケさんのフリッターと伊府麺と梅酒が、いま食卓にあればもっとシアワセなのになぁ。

メイン・ディッシュ

メイン・ディッシュ