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-オシツオサレツ日々は過ぎる

「血の婚礼」@東京グローブ座

はい、では白井晃演出劇がいかに面白いかあげてみよう。

1) 飽きない
えぇ、まったく飽きませんね。むしろ東京グローブ座で三階席だった私には、そこの立ち位置はここから見えないんじゃいっ。もっと奥へ!もっと左へ!よく観させろ!と、ガッツリ思ったほど…。
場面の移り変わりの暗転は最少、暗くなるよりも群像を使ってごく自然に場面展開と小道具配置がさり気なくされ、歌に踊り(フラメンコ)と効果的演出は目にも耳にも非常に楽しい。


2)生演奏
かなり贅沢指数高いっす。ギター奏者渡辺香津美氏のオリジナル(だけでもポイント高いと思うんだが…)が録音じゃなくて、シーンにぴったり合わせて、その場で演奏されます。
いやー、これには参った。白井さんはどうやったら、劇が面白くなるか正しい術を知ってるし、実践してる。

3) 演技者
まぁ、いちばんはココなんだけど、最も引っ張っていたのが江波杏子さん。凜として芯のある強い母親。貫禄と優雅を兼ね備えた(周囲と違和感ない)ああいう演技はなかなか見られるもんじゃない。彼女なしでは、舞台が成り立たないっしょ。

黒い男の新納慎也さん。セリフは少ないけど、踊りの見せ場がすごいいい。長身で長い手足で自在に翻るマント姿はため息でます。ひとりでメインに踊る場もあれば、結婚の宴会で他の役者が演技してる中、ひたすら影絵として踊っていたり。劇中のこの人の使い方もかなり印象的。


そして、久々しっかり観た池谷のぶえさん。猫ニャー時代からのぶえさんは好きで、森山未來くんやソニンよりも、まずのぶえさんを観に来たというか…。らしさを損なわず生かした感じで、朗々としたのぶえさんに歌を歌わせたのはナイス〜!と思って浸れた。


4)舞台芸術もろもろ
様々な劇に多種多用の舞台芸術。白井さんの劇は統一感があり、中でも抜きんでて美しいと思う。
白い土塀と大地を彷彿とさせる白を基調にした舞台と服装。透かし入りの床に敷かれたフロアラグは、ある場面ではカーテンとなり、差し込む照明が、大地を照らすとそれだけで美しい透かし柄が写し出される。
照明効果では、大地に血がバーッと広がっていく様が本当に血が溢れていくようで、ゾッとしつつも奇麗だった。あれはどこから照明を当てて、浮き上がらせているんだろう?


ということで、全体的にこれは今年ベスト1(暫定)に輝く劇だった。
眼福。
おまけに公演は東京千秋楽で、終わっても鳴り止まない拍手。カーテンコールは全部で4回かな?
渡辺さんがギターをかき鳴らせば、未来くんがフラメンコを最後に踊ってくれて、うわーっと更にテンション高くなって最後にはほぼ全客総出でスタンディングオベーションしてた。
あ〜、ストーリが悲劇でもこんなにエネルギッシュで情熱溢れたいい劇が観れるとは予想してなかったので、本当に楽しかった。

三大悲劇集 血の婚礼 他二篇 (岩波文庫)

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