PUSHMIPULLYU

-オシツオサレツ日々は過ぎる

冬の絵空@世田谷パブリックシアター


己を己とどうやって身の証を立てることができるだろうか。
自分で自分のことはわかるけど、他人にはそれはわからない。
虚と実が入れ替わっても歴史は変わらないのか、「忠臣蔵」をベースにそれをしのけた話、まぁこの世はすべて「絵空」事ということで…。
(以下ネタバレあり)


なんせ大石内蔵助は討ち入りをしたがらず、ずっと昼行灯。義に溢れる赤穂浪士たちは、才ある者たちはすでに他家へ仕官済み。残ったのは、アホばかりで仇討ちなどとてもとてもというむちゃくちゃ設定。更にその先に進むと、切腹した浅野内匠頭は影武者で、殿は生きていて、殿中で吉良を襲ったのもキライだったからの理由。


大石の橋本じゅんさんは、抑えた感じで、阿佐ヶ谷の「桜飛沫」を思い出しす感じ*1。周りの赤穂浪士ボケ7人衆が笑えた。吉良上野介の漢字が読めなくて、「きら、うえ…、なんとかを討ち取るぞー」とか言っちゃうアホさ加減*2。このメンバーに男だらけじゃなくて、矢頭右衛門七役に新谷真弓さんが出てて、笑い増幅というか、キャラに和んだ。
そんな腰を上げない大石に無理矢理討ち入りをさせようと、画策してみごとに自分の筋書きが現実と離れていく腹黒商人の天野屋利兵衛が生瀬勝久さん。いやぁ、生瀬さんはどんな役でも期待を裏切らないというか、それ以上に打てば響く、場の掴みようはさすが。
なんだかいっぱい役どころがあったのは、伊達暁さん*3。まっさか吉良の妻役になるとは…、思いもよらず(笑。でも討ち入り場面で、薙刀(槍?)振り回す殺陣は、キャストの中でもいちばん格好よかったっす。
身分は河原者、歌舞伎役者の沢村宗十郎藤木直人。なんの役だか初めよくわからんくて、出だしの天野屋で恋人のおかる相手に、いきなり歌舞伎の口上を言い出し、ひいたんだけど、慣れたらその後は別に違和感なかった。逆に大石内蔵助になりきる終盤はよかったし。
ラーメンズ片桐仁さんの犬男がいいっす。ワンとしか言わなくても、目で追っちゃうあのお茶目さはなんなんだろう。とかくお気に入りで、最期もいいとこ持ってった(笑。
サラリーマンNEOメンバーでテレビでしか見たことなかった中越典子さんは、演技うまい。尼と、年若いおかる役と演じ分けが、すごかった。


圧巻なのは、さいごの桜だなー。
なんか幕が下りてきたよーと思ったら、見事に花びらつけた桜の大枝でした。薄桃色の照明が当たって、はらはらはらはら。幕みたいなもんだから、舞台一面、すごいことにすごいキレイだった。


総じて考えさせる内容で、結構面白かったと思うけど、会心の舞台とは思わなかったのが残念。
なんでなんだろうなー。
仕事帰りですっごい見るのに疲れたせいもあるし、長かったし、あとから吉良役は栗根まことさんで見たかったと思ったり、まぁいろいろかー。

*1:まー、「桜飛沫」同様に抑えた感じより、はっちゃけた方が好きだとは思ったけど…。声がいい人でんな。

*2:しかもこれを皆で復唱するのさ

*3:4役?大野九郎兵衛、清水一学に町人、犬男