PUSHMIPULLYU

-オシツオサレツ日々は過ぎる

恩田陸「光の帝国」

うちには一冊だけ、まともに画集と呼べるものがある。その中に「光の帝国」(L'empire des lumieres:Magritte 1948)という絵がある。この小説とは関係ないのだが、光と闇の陰影が濃いその絵は、印象的でこの小説とも似ている。


通勤電車の行き帰りにずっと鞄に入れていた。家でも会社でも読む暇もなく、だからと言って活字離れもしたくなかった。
就職して今までの読書量がグーッと落ち込んで、久しぶりに読んだ一冊だった。朝、電車のドア脇でページを捲っては、ちょっと不思議な気分になり、また違う朝には「光の帝国」の章を読んで、会社行く途中に泣きそうになった。いちばん最後の「国道を降りて…」を読んだのは、どーしても続きが気になって就寝前の布団の中。かなりシアワセな気分で、熟睡。


ファンタジックゆえに、ときに残酷で、また心温まる。自分の引き出しの中にいつまでも仕舞って置きたくなる物語。 巻末の久米沙織氏の解説が、この作品のことをすべて言い得ていて、頷くばかり。


ここから、恩田陸読破計画が推進中。どこまで、辿り着けるやら。

光の帝国 常野物語 (常野物語) (集英社文庫)