PUSHMIPULLYU

-オシツオサレツ日々は過ぎる

恩田陸「月の裏側」

馴染みの図書館には、恩田氏の蔵書率がとても低いのだが、珍しく読んだことの無い本発見。一も二もなくキープして、そのまま借りてくる。


これには「しまった」と思った。うすうすの嫌な予感が的中したが、すでに引き返せない。夜中の1時過ぎにそう思いつつ、読んでいた。


とにかく、いわばホラーとでも言ってもいいんじゃないかと思う。私のひどくキライなジャンルなのだ、苦手ともいうが。映画ならば目を背ければいいし、テレビでもチャンネルを変えてしまえばいいことなのだけど、 小説はそうはいかない。後味の悪い中途半端なままの方が、こういうものはコワイ。皆の寝静まった夜に、手段はページを捲るしかなかった。


ひとつの可能性のある世界。味気のない世の中に、ゼロとは言えない不思議な世界がある。ウソかもしれないけど、本当じゃないと誰も言えないような世界。人が現実だと思っている境界線というのは、ひどく曖昧で大したことじゃないのかもしれないと思った。


猫に白雨という名はいいな。

月の裏側 (幻冬舎文庫)