ムーラン・ルージュ
新鮮な驚きとスピーディな展開に豪華絢爛に溢れる画面、心地よいミュージック。すべての役者となにもかもが揃っている。
こう感じる映画も、そうそうない。ミュージカルは映画のオモシロさを最大限に生かす手法だなと、今ごろになって思う。ミュージカル全盛の「サウンド・オブ・ミュージック」とかただの古典だと思っていたが、それがどうしたものか「ムーラン・ルージュ」の冒頭でまず、天井から落ちてきた(その言葉通り)ボへミアン革命の思想溢れるミュージカルを作ろうとロートレックたちが不可解?な詩を口々に言い合っている場面で、新参者のユアン・マクレガー演じるクリスチャンが易々と「Sound of Music」のサビを幸せそうに歌って皆をハッとさせるあたり。いい歌だと思うと同時に、ユアンはなぜこうも歌が上手い?と聞き入ってしまった。
そこからはもう、見入るまま聞き入るまま…。サーティン演じるニコール・キッドマン、美女なのは重々承知しているが、妖艶さとコメディ振りと歌唱力とこうも取り揃えていると、こちらはもう何もいうことはない。クリスチャンが仲間のしょーもない工作で公爵と思われたまま、高級娼婦のサーティンに詩を朗読するため(文字通り)乗り込んだ「象の部屋」で喋っていた文句がいつのまにか「Your Song」になってしまうところ、きっと何度みても好きだな。既存の名曲をそのまま劇中の台詞とするのに驚き。知っている曲ゆえに誰にでも楽しめるし、自然に入り込んでしまう。なによりもユアンが、どの歌っている場面でも生き生きとしてて、この映画はハマリ役だったのだなぁと(あとでパンフを読んでもわかったが)観ていてこちらも楽しかった。
ストーリーは、既に周知の通りコテコテのラブ・ストーリーだけれども悲哀である。それでいて、茶目っ気たっぷりで(厳めしい公爵とピエロ顔のムーラン・ルージュのオーナーが「ライク・ア・ヴァージン」を真面目な顔で歌いまくり踊りまくったり)、重要なとこはクールに締めて(嫉妬に身を焦がすクリスチャンを見て、仲間のタンゴダンサーが低音で「ロクサーヌ」歌い踊りだす)、魅せるところはこれでもかというほど見せるバズ・ラーマンという監督の妙は、クセになりそう。もう一回映画館に見に行ってもいいな。
サントラCDにも、ちゃんと(?)二人の歌が入っていて充分楽しめます。本当に歌がウマイのがよーくわかりまする。
"Elephant Love Melody"
"Come What May"
"El Tango De Roxanne"
"Sparkling Diamonds"
以上の4曲、いいです。これに「ライク・ア・ヴァージン」もサントラに入ってればと思ったのは、私だけではないはずですが…。