フィリップ・プルマン「黄金の羅針盤 & 神秘の短剣 & 琥珀の望遠鏡」
ライラの冒険シリーズ
切欠は新潮文庫なので、またYonda?ポイントを貯めようと物色したからに他ならない。
ところが読み出してみると、これが殊の外面白い。同じような年代の少年少女であるハリーとかペギー・スーとかの世界とは一線を画する。舞台が圧倒される程幅広くて、キリスト教の神の存在を問うというテーマが絡みあい壮大な風情。
ただ、それは読み終わってこういう本だったのかと改めて思っただけで、読んでいる間に宗教がどうこうという問題はない。下地に聖書があって、そこからの引用や流れがあるけど、そこは想像力で補ってなんとかなるし、そもそも主人公の子供であるライラとウィルは神がどうこうなんて、これっぽっちも考えていない。
周りの大人たちが、大々的な宗教抗争をいつのまにか始めて、その鍵を握っているのが、この二人の子供で、いわば彼らは巻き込まれたに過ぎない。
この物語の中、世界は多数ある。世界というか異次元というか、いやパラレルだから、多次元平行世界か。
一部を除いて、多数世界があることを普通は誰も知らない。ライラもそうだし、ウィルもそう。ただ、歯車がどこかで噛み合い違えて、それを知る。
ライラの世界「黄金の羅針盤」は、ここと同じようで同じではない。石油がないし、故に発達していない時代のようだが、それに代わる高度な文明なのに、すべての人間には守護霊ともいえるダイモンがいて、魔女がいて、鎧グマがしゃべり、いなくなった友人を探しに行くライラに力添えをしていく。
ウィルの世界「神秘の短剣」は、ここと同じ世界。電気があって、自動車が走り、人間にダイモンはいない。 冒険家だった父から音信が途絶えて、母と一人暮し。でも父には秘密がなにかある、父のなにかを探しに来た者たちを切欠に家を出る。
最終的に「琥珀の望遠鏡」は、ライラとウィルがなにをするか、平行世界を股にかけて理解していき、二人とも大人になって成長していたことを知る。
ざっといえば、この続きものの3巻はこんな流れだが、それをここに書こうとするのは、無理。先の読めないストーリーと世界、活躍するキャラに、あったらいいなの真理計や短剣とかの小道具。風呂場で30分と時間を決めて半身浴しつつよく読んでいたが、本が面白い故に止まらなくて40-50分読み続けては、家族に長風呂過ぎて寝ているのかと思ったと言われるほど、その世界は抜け出しにくかった。
それゆえ、最終巻の結末には読んでいて諦観しながらも、自分を納得させるのは難しかった、そんなんアリかよみたいな。説明されれば、非常に道理がとおっていることだから、抵抗できないし。いや、だからすべてひっくり返るわけでもなく、十二分に面白い小説でした。子供向きだと思って侮るなかれ、いやー、いろいろと勉強になります。
- 作者: フィリッププルマン,Philip Pullman,大久保寛
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