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ガース・ニクス「古王国記2 ライラエル 氷の迷宮」

図書館の書棚で目をひく本だった。

カチッとした印象のある大きさと厚みで、黒地に魔法の書を思わせるデザインのよい装丁。
これが全3巻セットで「サブリエル」「ライラエル」「アブホーセン」と並んでいたら、雰囲気ありすぎて、それだけでいとも容易く手に取ってしまうだろう。本は読まなきゃ良さが微塵もわからないが、これだけ作り手が凝る本が悪いわけないよなと、いやに書棚で主張していた。

全3巻だから、1作目が図書館に帰って来たときに借りて行こうと決心をしたものの、はや1ヶ月以上。行く度に序盤がないことにシビレを切らして、とうとう2巻目になる「ライラエル」をお持ち帰りしてしまった。

いや、読み出した「ライラエル」は面白かった。
前作を読んでいないと判らない箇所もあるが、話がちょうど切れいているし、主人公も代わっているので、読むのに全く不自由はなかった。
そこは現代と魔法が入り交じった国。チャーターと呼ばれる魔法は壁の向こうの古王国でしか使えず、こちらの現代世界には夢物語のようなもの。混乱していた古王国を治めたのが、おそらく前作の「サブリエル」。その14年後から話ははじまる。

主人公はライラエルという少女。古王国の中でも特別な力を持つクレアと呼ばれる一族、氷河を穿った住居に魔法をかけて心地よく暮らしている。ただし、彼女はクレア一族なのに一族皆が年頃になると持つという先視の力が14歳になっても現れない。容姿も金髪で浅黒い一族とは異質で、黒髪に白い肌。みにくいアヒルの子状態のライラエルが、まさに飛び立とうと魔法と不思議に満ちた世界へ踏み出していく。
自分は違うんだと死さえも考えた彼女が、ひとつの転機をきっかけに一族とは違う力を身に付けて行く様は小気味よい。相棒となるフリー・マジック(黒魔術みたいなものか)とチャーターとが入り交じった不評の犬との駆け引きに救われるし、仕事をするようにと司書になったライラエルがクレアの図書館を探険し、誰も立ち入らない部屋に入ったり、ビックリするような発見をしたり、進んで行く先の見えない物語はわくわくし、確実に睡眠不足を齎してくれた。

一方、サメス王子という更なる主人公がいて、サメスとライラエルが最終的に古王国で起こっている変事を治めるキーなのだろうが、それは続巻の「アブホーセン」へ続く。
敵であるネクロマンサーが操るのは、おどろおどろしい腐りかかった死体で、且つそれが襲ってきたりする話だが、全体的にわくわくが先で調子良く謎めいて、すっきりする。

この全3巻は、手元に置きたいよな。並べたら、にまーっとずっと笑っていそう。特に「ライラエル」は、表紙の絵の氷河の色がとてもきれいで眺めていて飽きない。要はお気に入りなのだ。

ライラエル―氷の迷宮 (古王国記)

ライラエル―氷の迷宮 (古王国記)