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-オシツオサレツ日々は過ぎる

敦 山月記・名人伝

九月の世田谷パブリックシアター、チケ抽選で当たったのは、2階の左手側。
どの席でも心地良く観れるのがここの舞台だと思ってるので、ある意味どこでもかまわないかと一番前列を横目でみつつ、自己暗示をかける。
舞台は円形基調。三日月のような傾斜した高台が半分を締めていた。下が湖面のように反射して始まるまで、ほんとに水かと思った。実際のところは大理石の鏡面かな。


尺八と大鼓。
これを聴くだけでも、一聞の価値あり。
どっちも狂言に馴染みのものかと思ってたら、尺八は狂言では使わないんだって。知らなかった…。このコラボが異色だと気付いたのは、終演後のポストトークで萬斎さんがこの演奏者二人をベタ褒めしたことによる。


出だし、尺八のむせぶ音に聞き入ってるといつのまにか幽体離脱している敦。うかうかしてると、いろんなこと見逃すとハタとしたら、すでに物語に入り込んでる。


中島敦山月記を教科書で習った世代だけど、いろんな諸作の方が断然面白いじゃないかと思ったのは、青空文庫で「文字禍」を読んだ時。以来、私にとっては昭和の文豪のひとりともいえる。なんせ漢文に精通してた中島敦の文章は平成に生きる私のような者には真似できない。流麗で端的で、激しい。


その作を萬斎が上演(再演だけど)するなら、是非観てみたい!期待は裏切らず面白かったし、演劇というものの可能性はやってもやり尽くされることはないんだなぁと。

またいつか再演があるなら、観に行きたいと思うよさが際立ってた。