PUSHMIPULLYU

-オシツオサレツ日々は過ぎる

松尾スズキ演出「キャバレー」

面白い〜!
松尾スズキがミュージカルって、どんなもんなのと思いきや、いやいや楽しかった、笑い泣き悲しみ=人生はキャバレーそのもの、その通り。


まぁ、いちばんの功労者はやっぱり阿部アダヲちゃんでしょう。MCは彼の為にあると思ったぐらい、かなりのハマり役だ。幕明けから歌うわ、止まらず喋るわ、踊るわ、ぐいぐいと舞台を引っ張って、観客をキャバレーに引き寄せ、とにかく愉快だった。
(楽日なのに前から二番目あたりのいい席がひとつ空いてて、舞台に遅れるなんて!来たら謝らせるから!とアドリブ入り。ホントに鴨が葱しょったようにそのお客さんが遅れて来たら、理由も言わず舞台に乗せてお辞儀させたし。笑)



「キャバレー」観たのははじめてだけど、主人公のサリー(松雪泰子)&クリフ(森山未來)の若いカップルより、アパート家主シュナイダーさん(秋山菜津子)と果物屋小松和重)の熟年カップルがよかったな。あの二人の先は悲劇なんだけど、特に婚約パーティをピークにテンションかなり上がった。
秋山さんは歌めっちゃウマいし、小松さんもいい声だった。なにより二人の掛合いが最高に笑える。しばらくは、常にパイナップル見ただけで数秒の思い出し笑いが可能かと。


松尾風に力を得た台詞たちは予想もつかず笑えるだけじゃなく、なんか考えるなと思ったり、去就する思いも様々。
果物屋が「あと何回一人で食事するつもり?四千回ぐらい?」と、婚約を破棄するつもりのシュナイダーさんにいう場面。
そんなのさびしいから、二人で生きて行こうと、説得にかかるキメゼリフなんだけど、彼女はそれにさらっと「二万回ぐらいよ」と答えてしまう。
女って、夢見がちどころか、かなりの現実主義者だ。だって四千回は一日三食として、三年半。二万回は桁も違う十八年ちょっと続く未来。「あなたと私の見ている現実は違うのよ!」とホントに…。


 その日が楽日の東京最終公演だと理解したのはカーテンコールで。いやに皆さん力いれて拍手してんなと思ったら(実際それだけ楽しませてもらったけど)、三度目ぐらいで松尾氏登場!!なぜかオーケストラ相手に「妖怪人間ベム」を舞台で熱唱。いや、意外というか意外に格好よくてうまくてニンマリ。それで劇場のアナウンスが「本日の公演はこれで終了いたしましたなんたらかんたら〜」言い出し左右の扉まで開かれてしまったのを、更に無視して拍手してたら、総動員コメント。サダヲちゃん、演劇中とちがって全く素コメントに笑。


 あぁ、ひさびさヒットな楽しい舞台だった。キャバレーが嘗ての賑わいを懐かしむように、余韻をいつまでも味わっていたいと感じさせる終わりだった。ブロードウェイみたいにロングランでやってたら、落ち込んだときとかスカッとしたいときとか観に行っただろうになぁと・・・。