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-オシツオサレツ日々は過ぎる

恩田陸「六番目の小夜子」

恩田氏の本に興味を初めて持った頃、読みたい読みたいとブツブツ呟いていた私に、友が貸してくれたもの。デビュー作であり、既に絶版の秋里和国の絵が表紙になっている文庫版のやつだった。

とはいえ、家に来てから手に取って読むまでに(よくあることだが)たぶん一年ぐらい放置されていたはず。その間に「六番目の小夜子」はHNKで鈴木杏主演でドラマ化もされ、今年には加筆修正版で新たに文庫が出ていた。読後にいつも、どうしてほったらかしにしていたのかと自問する類だ。

恩田氏の世界にある学園生活というのは、自分の胸に仕舞いこんだ「懐かしさ」を良くも悪くもとても引き出してくれる。こんなに甘酢っぱでも、スリリングに学園の謎を解こうとかをしたわけでもないけど、大いなる共感とともに、過ぎてしまった時代にちょびっと後悔まで呼び起こす程の。 文中に動く彼らは生き生きと愉快で、自分ももっとこうしてれば良かったとか余計なことが読んでいて、頭の片隅でウロウロしたりした。

デビュー作だと思って軽い気持ちで読み始めた分、非常に面白く、学校という場に相当に相応しいスリリングさに、ページを捲る暇が惜しかった。

六番目の小夜子 (新潮文庫)